1.使用目的と素材とデザイン



大雑把に素材には種類があります
1、鉄(軟鉄)・・・・加工性が良く熱処理しても硬度が変わらない柔らかい鉄
2、鋼鉄(鋼)・・・・鉄に炭素(カーボン)を僅かに加えた物(主に刃物用は0.8%〜1.5%程保有)
3、ステンレス(鉄合金)・・・鉄にクロム13%以上入っているものがステンレスと呼ばれます

どんな用途で使うのか考えて見ましょう
例:海の中で使うダイバーズナイフでサクサク切れる物
   錆びては使い物にならないのでステンレス系ですが刃物としての硬さを出す為には炭素が必要になります
   ただし炭素の保有量が増えれば錆び易くなりますので刃物に適した高炭素鋼では流石に錆びます。
   市販の物はコストの都合で少量の炭素しか含まれない「錆びないが切れない」SUS304等の素材が使われています
   上記のコンセプトに合致する物を市販で購入しようとすると数万はします。
   まぁ、ここでは作ることを前提としていますので話を進めますが、要は炭素以外で硬くなれば良いわけで
   高価なナイフ要の素材にはこれまた高価なレアメタルを混ぜて硬さや粘りを出しつつ錆びにくい物が販売されています
   例えばタングステンやモリブデンと言った物を混ぜた物です。
   こういった多少値の張る素材で作れば(っといっても素材は\2〜3000が主流)実用的なものが作れます
   オススメの素材:CRMO-7、440C、


例:作業場で使う切れ味の良いナイフ
   多くの場合水気の無い場所だと想定します、(むしろ油気が多いかと)よって耐食性は無視します
   勿論現場によって異なるのでしょうが・・・
   こうなると切れ味が良く、研ぎやすい物が最適なので鋼の小刀が使い易いでしょう
   私はドロップハンター風に火造りしたサスペンションスプリング製のナイフを良く使います。
   オススメの素材:(鋼)バネ鋼、SK-2、ハイス鋼、D-2、ZDP189他多数



例:調理場で使うナイフ
   一応は水場、ですが海水と言うわけでもなく、常時水の中にある訳ではないので手入さえしていれば鋼でも問題は有りません
   安価な家庭用包丁などは殆どステンレス鋼のSUS304を使用しています。
   本職の料理人が使う和包丁などは切れ味が命だそうで(素材の細胞を潰さずに切る為)高い切れ味の素材が好まれ
   毎日研いでいるので手入の問題はありません。ゆえに鋼を使われることが大半です
   本職の使う素材:(鋼)青紙、(鋼)白紙、スェーデン鋼
   一般向けオススメ素材:CRMO-7、ATS-34、440C、ZDP189


例:アウトドアで使うナイフ(大型)
   アウトドア=外ですが、海は上記にありますので山川で考えて見ます
   木の枝を払う、薪を割る、土を掘る、獲物を捌く・・・色々使い方がありますがとてもハードな使い方です
   刃物が叩きつけられたりこじられたりするのでまずブレイドが折れるようでは話になりません
   鉈、マチェット、と呼ばれるタイプですが良く切れて折れにくく多少の錆びは問題としない物です
   良く切れる硬い素材を使えば折れやすく、折れにくくとも切れない・・・数百年前からコレ対策の構造はありまして
   いわゆる日本刀のように硬質材を軟質材で挟み込んだ物ならば良く切れて折れにくくなります
   コレは鍛接と呼ばれる火造り技術によって面で溶接される複合材になります
   一般家庭で作るのは作業場所の問題で困難ですが、既に接合された板材「三層鋼」が市販されています。
   オススメの素材:青紙1、2号・白紙1,2号の三層鋼、ATS-34、440C


例:アウトドアで使うナイフ(小物)
   いわゆるナイフとして思い浮かべる最も多く使われる手ごろなサイズのナイフ
   木材の加工から調理、様々な事に使えるマルチユースナイフです、バランスの良い素材を使いましょう
   切れ味、耐食性、対衝撃性、刃が長持ちする事など基本バランスの整った素材
   オススメの素材:ATS-34、440C、ZDP189三層鋼、




ステンレス系鋼材、クロム13%以上を保有する物をステンレス系に分類される。(クロムは錆びに対する耐性を作る物質の一つ)
鋼材名/管理人経験 HRC硬度(硬さ) 錆び難さ 研ぎ易さ 加工のし易さ 耐熱性 切れ味 価格
ATS-34 60〜61 錆び難い 良い 普通 普通 良い 標準的
加工経験あり 高級ナイフ用鋼材の代名詞、総合的なバランスが高いレベルで整い、市販されている鋼材のサイズも豊富
加工性は粘るので多少苦労する、研ぎは合成砥石や紙やすりを利用すれば問題ない
5mm厚級のナタとして製作した物でも切れ味は高く人気、価格もお手ごろ
440C 58〜59 非常に錆び難い 良い 普通+ 不明 わりと良い 比較的安価
440A完成品を所有 比較的値の張るナイフに採用されているステンレス鋼、錆びに非常に強くダイバー向け
硬度と刃の持ち具合でATSに劣るが研ぎやすく加工性は良く価格も安めなので量産に向く
鋼材バリエーションもA,B,Cの三種類がある(Aは柔らかくCが硬くナイフ向き)、サイズも豊富
主に販売されている鋼材は440Cがほとんど
CRMO-7 56〜58 非常に錆び難い+ 普通 非常に良い 弱い まあまあ良い 僅かに高価
加工経験有り 加工性が非常に良く初心者にも優しい素材、非常に錆び難いのでダイバーや包丁向き
鋼材は薄めの物が多い、硬度は低めだが実用十分な硬度は有り、刃持ちも良い
低温焼き戻しを行う鋼材なので熱に弱いが通常は問題ない(ロウ付けヒルト不可)
研ぎ易いものの粘り強い為カエリが出来やすい
ZDP-189 64〜67 やや錆び易い 困難 困難 不明 非常に良い 高価
加工経験有り 新しい粉末合金鋼材、加工は困難で可能な限り工作機械があることが望ましい、
研ぎはダイヤモンド砥石や紙やすり系で無いと困難で、錆び難さもATSに比べれば低い
切れ味は魅力的で刃持ちも良い、衝撃に対する耐性が低い為ナタなどには不向き、
両面をATS-34で挟んだ三層鋼も同価格で販売されている、こちらは加工性、耐衝撃性が向上するが両刃専用
AUS-8 55〜58? 錆び難い 容易 良い? 不明 まあまあ良い 安価
完成品を所有 ファクトリーナイフに良く使われる鋼材、\3000〜で販売されているナイフに使用されていたりする
キャンプ用の\1000〜2000位のナイフとは別です
バランスが良く衝撃にも強い物の硬度が低いが、アメリカで好まれる硬度はこの位なので丁度良い
フォールディングからタクティカルナイフまで様々な物に使用されている
AUS−6等も有るがこちらは不明。鋼材としての販売は見た事が無い・・・
S30V 60前後?? 錆び難い 不明 不明 不明 良い 高価
経験無し 最近アメリカから来たばかりの粉末ステンレス鋼、(ZDPのような物か?)
錆びには強いらしいが、同じ雑誌の別々の記事で片方は「加工性が良く研ぎもし易い」
と書いてあるのに別のページでは「加工しにくくベルトを何本も変える必要のある工場泣かせの素材、
非常に研ぎにくい」と書いてあったりするのでどちらが本当かは不明
個人的には加工し難い方が真実だと思われるが使った事が無いので何とも言えない
耐摩耗性が高く切れ味が非常に長く続くが、常に砥いでいないと研ぎ直が困難に成る。
高炭素鋼、ハガネ系。錆び易いが手入れしやすく切れ味の良い材料(鉄に0.8%ぐらいの炭素を混ぜた物がハガネになる)
D-2 60〜61 少し錆び易い 良い 良い 非常に良い 優れる 安価
製作中 金型などに使われる鋼材、温度変化による歪みが発生し難い。(ダイス鋼)
クロムが11.5%でステンレスに含まれないが海で使わない限り錆びは問題ない、
クロム(レアメタルの一種)が少ない為か安価で切れ味、加工性、研ぎやすさに優れる
熱に強く430℃まで耐えられる等の特徴がある、ファクトリーナイフでも使われている
表面がピカピカにはなり難いが小型のナイフからナタまで対応できる、山向きな素材
*JIS規格ではSKD11と呼ばれる、焼入れはステンレス扱いで約\1500ほど
O-1スチール 60前後 錆び易い 良い 良い 不明 優れる 標準的
経験無し ランドールナイフなどに使われる鋼材、錆び易いが切れ味の鋭さが魅力的、
青紙1号 60〜63 錆び易い 良い 鍛造が必要 不明 優れる 標準的
鋼材所有 和包丁などに有名なハガネ、硬度や切れ味は鍛造時の技術によって差が出る為一概には言えない
主に軟鉄などに鍛接して加工されるため市販される素材は細いものが多い、加工性は良いが
鍛造して形にするので、七輪+送風器+金床+金槌を使える庭が必要。
焼入れは炭素鋼扱いで¥2000〜3000
スプリング鋼 不明 水で錆び易い 良い 鍛造が必要 普通 優れる 廃材利用
加工経験有り 車やトラックのサスペンションスプリングや板バネが素材、鍛造して板状に加工してから利用する
廃車業者から安価に譲ってもらえ、鋼材としても優秀。焼き鈍し処理が必要だが加工性は良い
推定硬度は60位か?水研ぎでは直ぐ錆びてしまうのでオイルストーンなどで研いでいる
古ヤスリ 60〜63 かなり錆び易い 良い 焼き鈍しが必要 不明 良い 廃品利用
加工経験有り 使い終わった古ヤスリを焼き鈍しして鋼材として利用する、物によっては軟鉄の表面にのみ炭素を染み込ませて
焼入れした物もあるがコレは使えないので注意、全鋼の物のみ。小さめのヤスリはほぼ平気だと思われる
グラインダーで表面を削ったときと、表面を削り落とし中心部分のみを削ったときで火花が異なる物はNG
ハガネの場合は火花が散るが、軟鉄の場合は火花がそのまま流れるのでここで判断する。
ヤスリ目をデザインとして残すことで趣きのある風合いにもなる。元が板材なので鍛造しなくても利用できる。



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